ステンレス浴槽と聞いて思い浮かぶもの、それはきっと数十年前の日本の家庭にあった小ぶりなバスタブではないでしょうか。内側はステンレスで、外側にエプロンと呼ばれる目隠し板をはめたスタイル、これがステンレス浴槽の主流でした。
創業50周年を迎えた弊社工場。実はその長い歴史の中で一番多く生産してきたものは累計100万台を超えるバスタブです。しかし、時代の流れと共に、昨今バスタブといえば、FPRを中心とした白い樹脂素材が一般的になりました。樹脂素材は比較的リーズナブルで、形状や色の選択肢も多いというメリットがあります。ただし、汚れがつきやすいというデメリットもあり、バスタブの素材として最適というわけではありません。
ステンレスは錆や傷に強いため、素材としてはバスタブに最適と言えますが、そのデザイン性において進化せぬまま、古い時代の産物として扱われてきたように思います。実家には未だ素材として古びることなく日々使われている年代物のステンレス浴槽があります。小ぶりですが少し深めで、肩までとぽんとお湯に浸かるあの感覚は、入るたびに不思議と「あぁ、いい湯だなぁ」と心地よく感じるものです。